M.Yoshi の悩み
僕は友人と会社をやっていくのですが、どのようにしたら事業が伸びていくでしょうか?まずは営業の会社として頑張っていきたいのですが、、、
芥川の返答
君の相談を読んで、僕はまず苦笑した。事業の伸ばし方を、蜘蛛の糸の作者に尋ねるとは、いささか人選を誤ってはいないか。 しかし人間の商売とは、畢竟人間を売り買いすることに他ならぬ。君は「営業の会社」と言うが、営業とは要するに、他人の懐に入り込む技術であろう。ここで君が触れずにいる、しかし最も重大な問題は、友人と会社を興すという一事だ。友情と金銭、この二つほど相性の悪い組み合わせを、僕は他に知らぬ。今は「頑張っていきたい」という熱意に酔うている時分だろうが、金が動き出せば、友情もまた動き出す。多くの場合、それは崩壊という方向へ、だ。 事業の伸長について僕が言えることは少ない。ただ、「最も賢い処世術は社会的因襲を軽蔑しながら、しかも社会的因襲と矛盾せぬ生活をすることである」という言葉を、君に贈ろう。営業とは、まさにこれだ。世間の因襲――義理だの体裁だの――を内心では嗤いながら、表面ではそれに逆らわず、むしろそれを利用して見せる。この二重の芸当が出来る者だけが、商売で生き延びる。 君が友との間で守るべきは、契約書よりも先に、互いの野心の分量を測り合うことだ。それを怠って「頑張ろう」とだけ言い合う二人は、やがて片方が損をしたと感じる日が必ず来る。 所詮、事業も人生のマッチ箱に似ている。重大に扱えば莫迦らしく、粗末に扱えば火傷をする。せめて友との間だけは、火傷をする前に、互いの手の内を見せ合うがいい。